距離測定装置 (DME)


距離と速度はどれくらい?

パイロットが知っておきたい位置情報には 3 つあります。それは高度、飛行コース、目的地までの距離です。わかって当然だと思われるかもしれませんが、現在地がいつもそう簡単にわかるとは限りません。そこで航法を助けるために開発された計器のひとつが、距離測定装置 (DME: Distance Measuring Equipment) です。

セスナ 172 の無線機器パネルに搭載されているベンディックス/キング製 DME

DME とは

専門的に言えば、DME とは計器パネル インジケータを介して飛行機と地上局との距離 (海里) をパイロットに伝えるパルス式電子航行装置です (『Dictionary of Aeronautical Terms, 3rd ed.』)。つまり VORTAC 局と無線信号をやりとりして対地速度と距離を算出するものなのです。

VORTAC とは超短波全方向式無線標識 (VOR) と戦術航法システム (TACAN) 送信機を組み合わせた地上局で、航空機の VOR 受信機に方位情報を送信します。機上の DME は、受信機から質問信号を VORTAC に送って応答信号が帰ってくるまでの時間を測定して、距離と速度を算出します。DME のディスプレイに、地上局からの距離 (海里) と航空機の対地速度 (ノット) が表示されます。VOR/DME システムが使えるのは地上局から 141 海里 (nm) つまり 260 km までの範囲です。

DME は VORTAC からのラジアルおよび距離情報を使って自機の正確な位置を算出できます。ある局から 090°ラジアル上に、27.5 マイル (44.25 km) 離れたポイントは 1 つしかありません。無線を合わせている VORTAC 局がどれかわかっていて、その局を航空図上で見つけられれば、自分がどこにいるかを把握できます。そうした理由から DME はインターセクションやホールディング パターンの位置確定にも使えます。DME がない場合には 2 つの局からのラジアルを使って、こうした位置を算出します。

DME を計器着陸装置 (ILS) やローカライザと組み合わせて使うこともできます。この組み合わせを使った進入方式の 1 つが DME アークです。これは初期進入ポイントから半円を描きながらファイナル アプローチ コースに入る方法です。パイロットは DME を使って、発信機から一定の距離を保つ弧を描きながらローカライザをインターセプトするポイントまで飛行します。進入システムと組み合わせた場合の DME の有効半径は 40 海里 (74 km) です。

どの局?

どの VOR 局から DME 信号が発信されるかを知るには、どうすればよいでしょうか? Flight Simulator のマップでは、VOR、VOR-DME、単独型 DME は実際の航空図と同じく、それぞれ違った記号で表示されます。

直距離

ピンと張ったひもが肩から 10 フィート (8.5 m) 先の床まで伸びているのを想像してください。このひもをピンと張ったまま肩から床に下げていくと、自分が立っている場所より後ろにひもの先端が行きます。DME による測定もこのピンと張ったひもと原理は同じです。

直距離とは飛行機から局までの距離を測定したものです。

VORTAC から機上の DME 受信機までの距離を直距離と呼びます。直距離と飛行機直下の地点から局までの距離との誤差は、遠距離であれば無視できます。航空機が局に近づくにつれて直距離の誤差は大きくなり、局から半径 1 マイル以内を飛んでいるときは特に深刻になります。飛行高度が高ければそれだけ誤差も大きくなります。地上局に近づいたら誤差に気をつけてください。

速度はどれくらい?

対地速度とは地上を基準とした飛行速度のことです。DME には、対地速度がノット単位で表示されます。対地速度が精確に計測できるのは、飛行機が局に向かってまっすぐ飛ぶか、または離れていく場合だけです。対地速度を知ることは、チェックポイントや目的地への予定到着時刻を予想するときに役立ちます。

DME も対地速度を計測します。

上にあるベンディックス/キング社製 DME 受信機の写真を見ると、航空機が地上局から 27.5 海里のところを 98 ノットで飛行しているのがわかります。このシナリオの情報は VOR1 に合わせている局を基準にして算出されています。どの VOR に対して DME で測定するかを選択するには、DME 受信機の R1/R2 (Radio 1/Radio 2) スイッチを使用します。

DME は「距離と速度はどれくらいか」という質問にすぐに答えてくれるのです。

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