ATC (航空交通管制) とは


空の安全を確保する ATC のしくみについて

はじめに

現在のように、非常に多数の航空機が空を飛び交うような状況では、混雑した道路とまったく同様に交通整理が必要になります。すべての航空機がどこにいて、どのような高度や速度で、どのルートに沿って飛行しているのかを管理する人が必要です。この仕事は、世界中のほぼすべての国に設置されている、さまざまな航空交通管制機関が行っています。航空交通管制は、安全性と経済性の面から、世界各国で不可欠な要素です。安全な運行を確保するシステムが存在しなければ、人や貨物を時間どおりに効率的に輸送することはできません。

米国交通統計局によると、2004 年に世界上位 30 か所の空港で行われた離着陸の数は 15,244,065 回にものぼります。 また、これらの非常に交通量の多い大規模な空港の周囲には、多くの場合、より小規模で混雑した複数の空港が点在しています。このような交通システムを正常に機能させるためには、24 時間態勢の調整作業がきわめて重要な役割を担っています。この調整作業の担当者、つまり、航空交通管制官は、高度な訓練を受けており、さらに年 1 回の再教育研修が義務付けられているほか、適切な管制表現の使い方についてコンピュータによる訓練および評価を毎月 1 回受けなければなりません。

航空交通管制官の業務は何種類かに分かれており、パイロットは管制許可を要請した時点から、タキシング、離陸、巡航、到着、着陸、駐機場までのタキシングというそれぞれの段階で、何人もの異なる管制官と交信します。空港の高いタワーで管制業務に就く管制官もいれば、空港からずっと離れた場所でレーダー画面をじっと見つめている管制官もいます。また、タワー管制官がグラウンド コントロールの仕事もこなすというように、1 人の管制官が複数の役割を果たす場合もあります (後の「管制オペレーション」を参照してください)。

コールサイン

管制官は、無線の交信相手をコールサインによって識別します。コールサインには、民間機の場合は機体の側面に描かれている文字と数字からなる登録番号が使用され、定期旅客機では航空会社の便名が使用されます。また、軍用機の場合は所属名と番号の組み合わせがよく使用されます。ほとんどの国では文字のみのコールサインが使用されていますが、米国では多くの場合、文字と番号の組み合わせが使用されています。Flight Simulator では、航空機のコールサインを変更できます (「コールサインの変更」を参照してください)。

たとえば、”N700MS” というコールサインは、登録番号が “N700MS” の民間航空機を表します。このコールサインは、”ノベンバー セブン ゼロ ゼロ マイク シエラ” と発音します。この例では “ノベンバー” の部分が文字ですが、米国では、このように航空機登録番号はすべて文字から始まります。

また、”World Travel 455″ というコールサインは、World Travel Airlines という航空会社の 455 便を表します。このコールサインは、一般には “ワールド トラベル フォー フィフティファイブ” または “ワールド トラベル フォー ファイブ ファイブ” と発音します。

“Navy 44F” というコールサインは軍用機を表します。このコールサインは、”ネイビー フォー フォー フォックストロット” と発音します。ただし、軍用機のコールサインには、所属部隊、航空隊の呼称、航空機の種類によって数多くのバリエーションがあります。”military call signs” というキーワードで Web を検索すれば、現在実際に使われている軍用機のコールサインを調べることができます。

トランスポンダ (スクォーク) コード

レーダー上では、コールサインのほかに “スクォーク” コードによって航空機が識別されます。現代のほとんどの航空機には、小型機から大型機に至るまで、”トランスポンダ” と呼ばれる無線機が装備されています。

パイロットは、4 桁の数字 (トランスポンダ コード、またはスクォーク コード) をトランスポンダに入力します。 このトランスポンダ コードによって、ATC のレーダー画面上で航空機が識別されます。

現実の世界では、VFR 飛行の場合の標準的なスクォーク コードは 1200 です。IFR 飛行では (場合によっては VFR 飛行でも) 管制官がパイロットにスクォーク コードを割り当てます。

Flight Simulator では、オート チューニング機能によってスクォーク コードが自動的に入力されます。オート チューニングの詳細については、「ATC の使用法」を参照してください。Flight Simulator では、DG-808S セールプレーン、DC-3、パイパー カブを除くすべての航空機にトランスポンダが装備されています。

実世界での ATC

航空交通管制といえば、飛行中の航空機がすべて ATC システムによる管制の対象となっているものと思われがちですが、それは誤解です。実際には、非管制空域と呼ばれる空域を飛行しているときは、誰とも交信する必要はありません。また、管制空域であっても、一定の条件下では管制官と交信せずに飛行することもできます。その一方で、必ず ATC と交信しなければならない場合もあります。 詳細については、「空域について」を参照してください。

ほとんどの国では、有視界飛行方式 (VFR) と計器飛行方式 (IFR) の 2 種類の飛行方式に関して、それぞれ規則が定められています。

VFR 飛行

気象条件が基準値を上回っている場合、大まかに言えば、視程が目視のみで飛行できる最低条件を上回っている場合は (それでもコックピット内の計器に頼ってかまいませんが)、有視界飛行方式 (VFR) で飛行することができます。VFR で飛行しているときは、管制官と交信せずに非管制空港に離着陸することができます。また、管制官との交信が必要な空域も VFR で飛行することができます。

IFR 飛行

気象条件が VFR の基準を下回るときに飛行するには、パイロットが計器飛行証明を取得している必要があります。また、多くの国では一定の高度 (米国では 18,000 フィート、つまりフライト レベル 180) より上空を飛行する場合も、計器飛行証明が必要です。Flight Simulator では、定期旅客機で VFR 飛行を行うことができますが、米国では定期旅客機のほとんどは IFR フライト プランに従って飛行しています。IFR で飛行するときは、ATC の管制範囲外の空域を飛行している場合や無線機が故障している場合を除いて、パイロットは ATC と交信する必要があります。Flight Simulator では、世界全域が ATC による管制の対象となっています。

Flight Simulator での IFR 飛行の詳細については、「IFR 飛行と ATC」を参照してください。計器飛行についてさらに学習するには、ラーニング センターの [レッスン] タブをクリックしてください。

ATC 用語

多くの訓練操縦士にとって ATC 用語は大きな壁の 1 つですが、実際にはそれほど難解なものではありません。ATC 用語は体系化されていて、略語もよく使われますが、予想される内容や適切な応答を学習すれば、ATC を使用することでフライト体験がより楽しいものとなります。

Flight Simulator は、ATC システムの使用法を学習するには理想的なツールです。以下で説明する内容の多くは、Flight Simulator では自動的に行われることに注意してください。パイロットからの応答は自動的に読み上げられ、その時点のフライト段階に応じた適切な選択肢がメニューに表示されるので、交信に使用するフレーズを丸暗記しておく必要はありません。また、[ATC] メニューで意図したものとは違う選択肢を選んでしまった場合は、別の選択肢を選ぶこともできます。[ATC] メニューはクイズではないので、選択肢のどれを選んでも “不正解” はありません。一覧に表示される項目はオプションであり、それぞれ異なる結果につながる道だと考えてください。自分がどうしたいかに応じて、適切な項目を選択しましょう。

ATC 交信において、特に周辺を多くの航空機が飛行しているときは、”明瞭さ” と “簡潔さ” が何よりも重要です。このため、パイロットや管制官が交わす言葉は、何やら特殊な言語のように聞こえることが多々あります。確かに特殊ではありますが、実際には単にごく簡略化した表現を使用しているにすぎません。Flight Simulator で耳にする用語は、実際に使われている標準的な ATC 表現に基づいたものです。

最小限の情報で、自分の意思を正しく伝える。それが、理想的な ATC 交信です。たとえば、管制官を初めて呼び出すときは、次の情報が不可欠となります。

  1. どの管制機関を呼び出しているか
  2. 自機のコールサイン
  3. 自機の現在位置
  4. 要請内容

では、上記の項目に以下の情報を当てはめて、グラウンド コントロール管制官と交信してみましょう。

  1. Los Angeles (ロサンゼルス) 空港、グラウンド コントロール管制官
  2. リアジェット N700MS
  3. 駐機場
  4. 離陸のためのタキシング

パイロット : “Los Angeles グラウンド、(こちら) リアジェット N700MS、現在駐機場です。離陸のためのタキシング許可をお願いします。”

Flight Simulator でパイロットが管制官に応答するときに使用する表現は、多くの場合、管制官が話した内容を手短に繰り返したものであることに気付くでしょう。実際の交信もこれと同様です。

次に、パイロットと管制官とのやり取りの例を示します。 パイロットは VFR 飛行中であり、シアトルの Boeing Field (ボーイング フィールド) 上空の空域通過を要請しています。

パイロット : “Boeing タワー、(こちら) セスナ N700MS、機種はスカイレーン。現在位置は Boeing の西 2 マイル。空域通過の許可をお願いします。”

管制官 : “セスナ 0MS、空域通過を許可します。 Boeing 管制空域を出るときに知らせてください。”

パイロット : “0MS、空域を出るときに知らせます。”

パイロットは、交信先、自機のコールサイン (この場合は “ノベンバー セブン ゼロ ゼロ マイク シエラ” と発音します)、航空機の機種、現在位置、要請内容を伝えることによって、最初の要請を行っています。これに対する応答として、管制官は通過を許可し、該当空域を離れた時点で報告するようパイロットに指示しています。そして、それに続くパイロットの応答では、自分が指示を理解したことが管制官に伝わるように、管制官からのメッセージの該当部分のみを繰り返しています。互いの交信相手を誤認しないように、パイロットと管制官は、どちらも常に航空機のコールサインを使用しています。

ATC における交信は、標準の論理的な手順に従うことだと考えれば、交信のやり方がより簡単に習得できるでしょう。これより長く、やや情報量の多いメッセージもありますが、逆にもっと短いメッセージもあります。ATC の言い回しに十分慣れるまで、何度も繰り返しメッセージを聞くことが大切です。

音標アルファベット

ATC 周波数での交信では、簡潔さとわかりやすさが重要です。 コックピットは騒音も多く、無線の音声が常に明瞭に聞こえるとは限りません。このため、航空界では、コールサインや滑走路交差点、誘導路などの情報を識別する際に、国際標準の音標アルファベットが使用されています。この音標アルファベットは、現実の世界でパイロットや管制官が実際に使用しているものです。Flight Simulator の ATC でも同じものが使用されているので、本物のパイロットと同様に覚えておく必要があります。

音標アルファベット

Alfa (アルファ)
Bravo (ブラボー)
Charlie (チャーリー)
Delta (デルタ)
Echo (エコー)
Foxrot (フォックストロット)
Golf (ゴルフ)
Hotel (ホテル)
India (インディア)
Juliet (ジュリエット)
Kilo (キロ)
Lima (リマ)
Mike (マイク)
November (ノベンバー)
Oscar (オスカー)
Papa (パパ)
Quebec (ケベック)
Romeo (ロメオ)
Sierra (シエラ)
Tango (タンゴ)
Uniform (ユニフォーム)
Victor (ヴィクター)
Whiskey (ウィスキー)
X-ray (エックスレイ)
Yankee (ヤンキー)
Zulu (ズールー)

管制オペレーション

空に上がったものは、必ず降りてこなければなりません。フライトは、エンジンを始動してから目的地に着いて停止するまで、論理的な順序に従って進行します。ここでは、ATC システムを使用しているときに、交信して許可を受ける必要がある、さまざまな管制機関について説明します。ほとんどの場合、管制機関ごとに交信する周波数帯域が決められていますが、必要に応じて複数の管制機関が同じ周波数帯域を共用する場合もあります。空港や計器進入で使用する周波数は、Flight Simulator のマップ画面で確認できます (「マップの使用法」を参照してください)。

フライトは、離陸から着陸まで論理的な順序に従って進行します。
A: 飛行前、B: 離陸、C: 出発、D: 巡航、E: 降下、F: アプローチ、G: 着陸

注意 : Flight Simulator のオート チューニングを使用すると、正しい周波数が自動的に無線機で選択され、[ATC] メニューにはフライトの各段階に応じた項目が表示されます (詳しくは、「ATC の使用法」の「オート チューニング機能の使用法」を参照してください)。

以下に示す管制機関の一覧は、離着陸を管制空港 (つまり、管制官との無線通信が必要な空港) で行うことを前提としています。Flight Simulator では、現実の世界と同様に、非管制空港でも離着陸を行うことができます (後の「非管制オペレーション」を参照してください)。

クリアランス デリバリー : 最初の交信相手

計器飛行方式 (IFR) でのフライトを開始するには、ATC から “IFR クリアランス” を受ける必要があります。Flight Simulator では、IFR クリアランスを受けるためには IFR フライト プランを作成する必要があります (「フライト プランナーの使用法」を参照してください)。IFR フライト プランを提出した後、フライトを開始するために最初に交信する相手がクリアランス デリバリーです。管制官が読み上げる IFR クリアランスには、フライトの目的地、ルート、高度、およびその他の飛行中に従うべき ATC からの指示などが含まれています。パイロットは、この IFR クリアランスを管制官に対して復唱する必要があります。

グラウンド コントロール : 滑走路へのタキシング

駐機場から移動する前に、自動気象観測システムが利用可能であれば、その情報を聞きます。

管制空港で駐機場から滑走路に移動するには、グラウンド コントロール (実際にはタワー管制官の 1 人) と交信して、滑走路へのタキシングの許可を要請する必要があります。 この要請で、パイロットはどの方向に出発するかを伝えなくてはなりません。Flight Simulator では、[ATC] メニューで方向を選択できます。また、離着陸を練習するために空港のトラフィック パターンにとどまることも選択できます。これは、一般に “タッチ アンド ゴー” と呼ばれています (トラフィック パターンの詳細については「空港の ATC オペレーション」を参照してください)。グラウンド コントロールからのタキシングの指示では、離陸に使用する滑走路へ向かう経路が細かく指定される場合があります。また、地上交通が混雑しているときは、滑走路への経路の途中までしか移動が許可されない場合もあります。指示の内容を注意して聞き、許可された地点の先には進まないようにしましょう。グラウンド コントロールが指示を出さない限り、タキシングは認められません。無線周波数はそのままグラウンド コントロールに合わせておき、離陸の準備が整ったらタワーにコンタクトします。

タワー : 離陸

滑走路に入り、飛行前点検が完了して離陸準備ができたら、タワー管制官にコンタクトする必要があります。タワー管制官は空港の滑走路を見渡せる高い管制塔の中にいて、通常は空港の上空 2,500 フィート以内、半径 4 海里の空域の管制を担当します。レーダー、目視、無線通信を使用して、離陸や着陸の許可を出し、交通の混雑状況をパイロットに知らせます。また、現在の風や高度計規正値に関する情報を提供し、タワーの管制空域を通過する航空機に許可を与えます。実際のタワー管制官は、通常、クリアランス デリバリーとグラウンド コントロールの役割を交代で務めます。 タワー管制官から追加指示が出された場合は、注意して聞いてください。タワー管制官からの許可を受けなければ、空港からの離陸は認められません。

アプローチ/ディパーチャー

多くの空港では、アプローチ (進入) およびディパーチャー (出発) を担当する管制官を配置して、混雑した空域の外側での IFR 飛行や、場合によっては VFR 飛行での移動の手助けを行っています。また、ディパーチャーが管制を担当する空域の通過許可を出す場合もあります。タワーは、離陸後の任意の時点で (通常は滑走路末端から約 0.5 マイルの地点を通過したとき) フライトの管制をディパーチャーに引き継ぐことができます。ディパーチャーは、この領域を通過してルートに乗るまでのフライトを管制します。 この作業を行う実際の管制官は、主要空港の近辺や、空港の管制搭の中に併設されているターミナル レーダー アプローチ管制 (TRACON) の建物の中にいます。アプローチとディパーチャーは同じ管制官が担当するので、空港を出発する (depart) ときでも、タワーからアプローチに管制が引き継がれることも珍しくありません。この点については、混乱しないようにしてください。

センター

航空路管制センター (ARTCC、または “センター”) の管制官は、他の管制官よりもはるかに大きな空域を担当します。米国では、23 か所に ARTCC の施設があり、それぞれが複数の州を管轄しています。 センターの管制官は、警備の厳しい建物の中で業務を行いますが、これらの施設はたいてい、どの空港からも遠く離れた場所にあります。フライトの進行に従って、センターから次のセンターへと管制が受け渡され、最後に目的地の空港のアプローチまたはタワーに引き継がれます。

米国では、各 ARTCC 施設が管制する区域は次の図のように定められています。

ARTCC (航空路管制センター): A. シアトル B. オークランド C. ロサンゼルス D. ソルトレークシティー E. デンバー F. アルバカーキ G. ミネアポリス H. カンザスシティ I. フォートワース J. ヒューストン K. シカゴ L. メンフィス M. クリーブランド N. インディアナポリス O. アトランタ P. ジャクソン Q. マイアミ R. ボストン S. ニューヨーク T. ワシントン

アプローチ

アプローチは、管制を担当する空域で到着、出発、または通過を行おうとしている IFR および VFR 飛行中の航空機に対して、レーダーを使用する、または使用しない管制業務を行います。本質的には、巡航段階の航空機を、着陸のためにタワーに管制を引き継ぐポイントまで降下させるための業務です。IFR 飛行を行う航空機に対しては、目的地の空港のファイナル アプローチ経路に到達するための方位をアプローチが指示することがあります。空港の近辺に TRACON が設置されていない場合は、ARTCC がこの業務を行う場合もあります。

タワー : 着陸

あらゆるフライトの目的は、フライトを安全に終え、地上に戻ることです。到着空港のタワー管制官は、航空機の離陸、着陸、および通過を担当します。IFR 飛行を行う航空機に対しては、いつタワーにコンタクトするかが指示されます。VFR 飛行では、空港に関する自動情報サービスを聞いた後、空港から約 10 ~ 15 マイルの地点でタワーにコンタクトするのが慣例となっています (詳細については、「空港の ATC オペレーション」の「空港情報の入手」を参照してください)。タワー管制官からは、空港へのアプローチ方法 (トラフィック パターンに入る方法) の指示のほかに、交通や気象に関する情報が伝えられることもあります。タワー管制官からの許可を受けなければ、空港への着陸は認められません。

グラウンド コントロール : 駐機場へのタキシング

航空機が着陸して使用中の滑走路から出ると、グラウンド コントロール管制官と交信するようにタワーから指示されます。 グラウンド コントロールからは、現在位置から駐機する場所までの経路が指示されます。地上交通が混雑しているときは、駐機場への経路の途中までしか移動が許可されない場合もあります。指示の内容を注意して聞き、許可された地点の先には進まないようにしましょう。グラウンド コントロール管制官が許可を出さない限り、タキシングは認められません。

非管制オペレーション

管制施設 (グラウンド コントロール、タワー、アプローチ、ディパーチャー) のない空港は、非管制空港と呼ばれます。このような空港やその周辺で操縦を行うパイロットは、CTAF (Common Traffic Advisory Frequency、通常は “シータフ” と発音されます) と呼ばれる周波数を使用して、区域内の他の航空機に自分の意思を知らせます。また、タワーが 24 時間態勢をとっていない空港では、タワーが稼動していないときに CTAF を使用します。

Flight Simulator では、非管制空港で航空機を操縦するときは [ATC] メニューに CTAF メッセージが選択項目として自動的に追加されます。CTAF を使用している空港を出発するときは、タキシングと離陸の意思を宣言する必要があります。また、CTAF を使用する空港まで 10 ~ 15 マイルの地点に到達したら、トラフィック パターンへの進入と着陸の意思を宣言する必要があります。この区域の他の航空機には “トラフィック” と呼びかけます。このような宣言を行うことによって、空港付近にいる他のパイロットに進入と着陸の意思を伝えるだけでなく、その区域で同じ CTAF 周波数を聴取しているあらゆる人にもこの情報を伝えることになります。だからこそ、より簡潔な表現で、明確に伝える必要があるのです。

CTAF 通信の背景にある考え方は、管制施設との交信の考え方と同様で、次のような情報を知らせます。

  • 交信相手
  • 自機のコールサイン
  • 自機の現在位置
  • 要請内容

たとえば、ワシントン州シアトルに近い Bremerton (ブレマートン) 空港から出発する航空機は、この情報を次のように知らせます。

  • Bremerton トラフィック
  • ムーニー N700MS
  • Bremerton 滑走路 19
  • 離陸

パイロット : “Bremerton トラフィック、(こちら) ムーニー N700MS、Bremerton 滑走路 19 より北東方向へ離陸します。”

伝える情報の順序は、それほど重要でないことに注意してください。重要なのは、自機が Bremerton 空港の滑走路 19 から離陸しようとしていること、およびこの区域を北東に向けて出発しようとしていることを、Bremerton 空港やその近辺にいる他の航空機に知らせることです。

ATC メッセージの受信確認

航空交通管制官から受信したメッセージの受信確認は重要です。ATC からのメッセージに対してパイロットが応答するときは、多くの場合、管制官のメッセージを短縮して復唱します。

例 :

管制官 : “セスナ 0MS、右に旋回、針路 270°、降下して高度 15,000 フィートを維持、周波数 134.85で Seattle アプローチにコンタクトしてください。”

パイロット : “セスナ 0MS、針路 270°へ右旋回、高度 15,000 フィートを維持、アプローチ周波数は 134.85。”

Flight Simulator では、ATC からメッセージを受信すると、パイロットが送信する応答の選択肢が [ATC] メニューに自動的に表示されます。

ATC に対するメッセージの繰り返し要請

ATC にメッセージの繰り返しを要請するとき、標準的な言い方では、管制施設の名前と自機のコールサインを伝え、”say again” と言います。 たとえば、ある針路に旋回し、降下して、トランスポンダを特定のスクォーク コードに変更するようにアプローチから指示を受けたとします。この指示の一部を聞き漏らした場合は、現実の世界では “Seattle Approach, Cessna 700MS, say again.” と言います。

Flight Simulator では、管制官からメッセージが送信されると、[ATC] メニューの最後に [もう一度聞く] という項目が表示されます。このメニュー項目を選択すると、管制官の直前のメッセージをもう一度聞くことができます。

例 :

  1. 指示 了解
  2. もう一度聞く

交信相手の引き継ぎ (ハンド オフ)

現代の多くの航空機の航続距離の長さを考えれば、航路に沿って目的地に到着するまでに、しばしば複数の管制施設の空域を通過するのは当然でしょう。また、駐機場から滑走路に移動する場合でさえ、パイロットは管制空港のさまざまな管制官と交信します。

ATC の管制下では、航空機の交信相手は、目的地に到着するまで、管制機関から次の管制機関へと “引き継がれて” いきます。引き継ぎの方法は単純です。管制官がパイロットに次の管制機関と交信するように指示し、その交信に使用する周波数を教えます。

例 :

管制官 : “セスナ 0MS、120.6 で Boeing タワーにコンタクトしてください。”

パイロット : “120.6 に変更、セスナ 0MS。”

管制官 : “セスナ 0MS、120.1 で Seattle ディパーチャーにコンタクトしてください。”

パイロット : “ディパーチャー周波数は 120.1、セスナ 0MS。”

パイロットは、無線機を新しい周波数に合わせて、新たな管制官に、その管制機関の周波数を使用していることを知らせます。

パイロット : “Seattle センター、こちらワールド トラベル 1123、FL280 で水平飛行中。”

パイロット : “Denver アプローチ、こちらバロン N700MS。”

パイロット : “Jackson ディパーチャー、こちらリアジェット N700MS、10,500 を通過、FL320 へ上昇中。”

施設の見学

Flight Simulator の ATC チームは、現実世界での ATC を正確に再現するために、数か所の管制塔、TRACON、および ARTCC を見学しました。こうした施設では一般の見学を受け入れているところが多く、またパイロットに対しては、無線機のマイクの向こう側がどのようになっているか見ておくことを強く奨励しています。


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