レッスン 1: VOR アプローチ


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VOR アプローチ

図 1-1 は、カリフォルニア州サンタモニカ空港の VOR アプローチ チャートです。

図 1-1

平面図 (B) 上を右上から左下へと、空港まで延びた太線 (E) に注目してください。これが空港 (F) まで導いてくれる計器進入コースです。 空港には、アプローチのための電波を発信する VOR 局 (G) があります。 では、このアプローチを飛行する方法を説明します。

今、航空機は、DARTS (ダーツ) インターセクション (H の地点) にいると仮定します。このインターセクションが、VOR アプローチ コースの出発点です。平面図では、計器進入コースはすべて黒の太線で描かれています。この VOR アプローチ コースは SMO (サンタ モニカ) VOR に向かう、方位 212 度のコースであることが書かれています。これから、この黒の太線に乗って、空港に向かうコースを飛行します。 そして、コースをたどりながら、アプローチ チャートの垂直断面図 (C) に書かれている最低高度まで降下します。

では、このアプローチ コースにはどうやって乗るのでしょうか。この黒い太線をインターセプトするためのレーダー方位 (針路) を航空交通管制 (ATC) が教えてくれる場合もありますし、太線に向かう VOR コースを自分で選択して向かうこともあります (これについては、後で詳しく述べます)。

サンタモニカ空港への VOR アプローチ

VOR に向かう 212 度のコースを飛行するには、まず、航法受信機をサンタモニカ VOR の周波数である 110.8 MHz (I に記載されています) に合わせてから、OBS を 212 度に合わせます。針路を 212 度にとり、アプローチ コースに乗ります。ここから、空港に向けて 212 度のコースをトラッキングします。

垂直断面図を見ると、DARTS (ダーツ) インターセクションを過ぎたら、高度 2,600 フィートまで降下してよいことがわかります (J)。多くの航空機には、距離測定装置 (DME) が装備されています。この装置を使うと、サンタモニカ VOR からの距離を知ることができます。VOR に近づくにつれて、DME カウンタに示される VOR 局からの距離が減少するはずです。DME が 6.7 マイルを示したら、そこが BEVEY (ビーベイ) インターセクション (K の地点) です。ここからは、高度 1,120 フィートまで降下できます。なぜこのように段階的に降下するのでしょうか。それは、アプローチ コースの下にある障害物より高い高度を、確実に維持するためです。通常、空港に近づくほど、高い障害物は少なくなります。このため、段階的に高度を下げながら滑走路に近づいて行くのです。

DME が 2.4 マイルを示したら、いよいよ CULVE (カルバー) インターセクション (L の地点) です。垂直断面図にはもう最低高度は示されていないので、この先の最終最低高度はアプローチ チャートのミニマ セクション、つまりこの計器進入で降下できる最低高度のセクション (D) を見る必要があります。ミニマ セクションには最低降下高度 (MDA) として 660 フィートと記入されています。空港が視認できなければ、これより降下してはいけないという意味です。また、最低 1 マイルの視程がない場合も、MDA より降下してはいけません。この視程は、ミニマ セクションの 660 フィートの横に記載されている数字です。

もしも、VOR 上空を通過するまでに空港を視認することができなければ、ミスト アプローチを行うことになります。したがって、VOR のフラグが TO から FROM に反転する垂直断面図 (C) の M の地点に来たときに空港を視認できなければ、ミスト アプローチ手順を行う決まりになっています。この手順では、再度アプローチを開始する前に、安全な高度まで上昇することが定められています。

VOR アプローチのバリエーション

VOR 計器進入の手順には、いくつかのバリエーションがあります。これらをマスターしておけば、どんなアプローチ チャートでも問題なく読み取ることができるようになります。たとえば、図 1-2 は、カリフォルニアのロングビーチ空港への VOR アプローチ チャートです。

図 1-2

図 1-1 と図 1-2 では、図の形式に多少違いがあることにお気付きでしょう。数年以内に、すべてのアプローチ チャートが図 1-2 の形式に統一される予定です。アプローチは、大きく 2 つの部分に分かれています。1 つ目は、SLI VOR に 300 度で向かうコースです。この VOR を利用するには、周波数を 115.7 MHz に合わせ、OBS を 300 度に設定します。A の位置には、このルートでの最低高度が 1,500 フィートであることが示されています。

TO/FROM フラグが反転して FROM になったら、旋回して、空港へ向かう 275 度のアウトバウンド コース (B) をたどる必要があります。垂直断面図には、アプローチ手順のこの部分の最低高度が書かれていないので、チャートのミニマ セクション (C) を見ます。 すると、このアプローチでは 560 フィートまで降下してよいことがわかります。 では、ミスト アプローチ ポイントはどこでしょう。これは、ストップ ウォッチで計った VOR からの時間 (そのときの対地速度によって異なります) か、または DME に表示される VOR からの距離のどちらかを基準にします。D の部分には、それぞれの基準によるミスト アプローチ ポイントが両方記載されています。

レーストラック パターンでのコース反転

このアプローチ チャートに関する最後の注意です。平面図の E の位置に描かれている、レーストラック型の経路に注目してください。コース反転 (プロシージャ ターンとも呼ばれます) の方法は 2 つあり、これはそのうちの 1 つです。たとえば、北から VOR に接近している場合、VOR を通過後すぐに、空港に向かう 275 度のコースに向けて旋回するのは急角度すぎます。 このような場合は、VOR を通過後にコース反転を行います。 120 度の針路で飛行すれば (F)、空港に向かうのとは正反対のコースに向かうことができます。ここから今度は、VOR に向かう 300 度コースをインターセプトするために旋回し、VOR 局の上空を通過したら、空港に向かう 275 度コースを飛行します。

簡単に言うと、コース反転のときには、レーストラックからはみださないようにすることが大切なのです。トラックからはみ出すと、地上に障害物がないとも限りません。もちろんシミュレータですから、それほど気にする問題ではありません。しかし、ここでは一応現実と同様に飛行してみましょう。レーストラック パターンでのコース反転をする場合の最低高度はわかりますか? 垂直断面図の G の位置を参照すると、1,500 フィートとなっています。

というわけで、北から SLI VOR に向かう場合、私なら VOR 局上空を通過したところで旋回して 120 度方向に進みます。この方法なら、レーストラックの外周から大きく離れずに済みます。垂直断面図のレーストラック部分 (G の位置) の横に書かれている時間、この場合は 1 分後に、左へ旋回して VOR に向かう 300 度コースをインターセプトして、このコースに乗ると計器進入は完了します。もちろん、OBS は事前に 300 度にセットしておきます。多少の簡略化はあるにしても、以上の方法は実際のやり方とかなり近いはずです。

若干補足すると、VOR に向かうルートには、コース反転を必要としないものもあります (“フィーダー ルート” と呼ぶこともあります)。平面図の H は、MIDDS インターセクションから始まるフィーダー ルートを示しています。”NoPT” と記載されていますが、これは「ノー プロシージャ ターン」の略です。このルートに従えば、コース反転せずに計器進入が可能です。つまり、VOR 通過後、空港へ直行せよということです。

バーブターン (基本旋回) でのコース反転

コース反転の 2 つ目のタイプを図 1-3 に示します。

図 1-3

これは、”バーブターン (基本旋回) でのコース反転 (プロシージャ ターン)” と呼ばれるものです。まず、ITMOR インターセクション (A) からアプローチするものとします。このルートは、224 度のコースで RDD VOR に到達します。VOR を 108.4 MHz に合わせ、OBS を 224 度に設定します。 B に記載されているとおり、このルートの最低高度は 3,700 フィートです。VOR を通過したら、175 度に旋回して C のアウトバウンド コースを飛行します。このとき OBS を 175 度に設定し直します。ここでの目的は、まず VOR からアウトバウンドで飛行し、方向を反転して VOR にインバウンドで飛行する計器進入コースをたどることです。

垂直断面図にはプロシージャ ターンの最低高度として 2,000 フィートと記載されているので、この制限に従いながら、VOR から D にあるように 10 マイル以内でコース反転を行います。降下しながらアウトバウンド コースを飛行し、10 マイル以内で 220 度に旋回します (E)。この針路で飛行するのは 1 分以内とし、針路 040 度 (F) に左旋回して、そこからインバウンド コースをインターセプトします。OBS を、VOR をトラッキングするように再度設定する必要があります。OBS を回して 355 度にセットします。 インバウンド コースに乗ったら、G にあるように 1,260 フィートまで降下してもかまいません。DME に RDD VOR からの距離が 2.6 マイルと表示されたら、ミニマ セクション (H) に記載されている 860 フィートまで降下することができます。垂直断面図に記載されている “M” (I の位置) によれば、VOR がこのアプローチ ルートのミスト アプローチ ポイントです。

ここで、ITMOR と RED BLUFF (レッドブラッフ) VOR (A 地点と J 地点) から、2 本のフィーダー ルートが RDD VOR に向かってそれぞれ延びていることに注意してください。フィーダー ルートは、計器進入コースよりも少し細い線で描かれていて、必ず最低飛行可能高度が併記されています。どちらのコースにも NoPT は記載されていません。したがって、これらいずれかのルートから RDD VOR にアプローチするときも、必ずプロシージャ ターンでコース反転を行ってから、計器進入手順に進みます。

RED BLUFF VOR (J 地点) からは、336 度のコースで RDD VOR に向かいます。OBS は 336 度に設定します。次に、VOR を通過したら左旋回して 175 度アウトバウンド コースを飛行します。その後は、上に示したコース反転の手順に従ってください。

さて、ここまでは全部理解できましたか? 計器飛行パイロットが通常数か月もかけて学習する VOR 計器進入について、駆け足で説明してきました。 ここまでの講義でくたびれてしまい、氷嚢で頭を冷やしたくなったとしても、私は責めません。しかし、信じられないかもしれませんが、あと 1 つだけアプローチ方式について学習すれば、計器進入の概要を理解できます。 それは計器着陸装置 (ILS) です。

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